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作品制作とその他思った事を書くブログ

美術作品等の展示台が倒れないように安全に展示する方法について

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アメリカのロサンゼルスの美術館で、自撮りをしようとした女性が誤って展示台に接触してしまい、展示台をドミノ倒しにしてしまったというニュースが話題になっています。

こういう事故、立体系の美術作品の展示では本当によくある話なんですよ。(ここまで激しいのはめったにないですが…)

例えば、僕が学生時代の卒展で、展示を観にきたお客さんが、ガラスで作られた作品を触ってしまって作品の一部が落下。破損してしまった!・・・みたいなケースに遭遇したりしたこともあります。

「触ってしまった」というのがその人の故意だったのか、それともうっかり洋服の一部が引っかかってしまっただけだったのかはわかりません。どちらにしても、こういうことはよくあることなので、展示台で作品を展示する際には本来であれば細心の注意を払うべきでしょう。

まあ、個人的にはうっかりやってしまったお客さんは本当に気の毒だと思ってしまいますね。(こういう事故が起こるのは、展示をした作家側が事故が起こりやすい展示方法で展示をしていたりする場合が大半ですので。)

僕自身も、作品展示をする時には展示台を使うことが多いです。その時は作品の見栄えを優先しつつも、事故が起こらないように出来る限りの工夫はします。100%事故を防ぐことはできませんが、意識して対策することで事故が起こりにくいように改善することは可能です。

<目次>

展示台に作品を置く時に気をつけること

ロサンゼルスの美術館の問題点

この記事の冒頭のリンク先の記事の動画を見る限りだと、この展示質の展示方法に幾つかの問題点を感じます。

  1. 展示台が密集しすぎている
  2. 展示台が細長い
  3. 写真撮影(自撮り)が禁止されていない?

まず、展示台が密集しすぎていています。そのせいで、観客が展示台の間を通り抜けながら作品を鑑賞するようになっています。これが非常によろしくない。

立体系の作品を観る時はしゃがんだり回り込んだりして、いろんな角度から作品を鑑賞するものだと思うんですけど、そういう感じで見れないような設計になっている様子です。これだと、うっかりしゃがんだら後ろにある展示台にお尻等が当たってしまう可能性が高いです。

また、展示台が非常に細長く、ちょっと触れただけで倒れてしまうバランスであることもよくありません。作品の形状で、このサイズでないとダメ!と言うのはあると思うけど、だったらせめてドミノ倒しにならないようにもっと作品同士を離して展示するべきでしょう。

そのためにはもっと広い展示会場が必要だったりするわけなんだけど、予算等の関係でそれができなかったりすることもよくあることです。しかし、それだったら作品の数を減らしたり、展示場所を複数の展示室に分散したりする等の対策が必要だったのではないでしょうか。

それと写真撮影に関してですが、最近は美術展で写真撮影が禁止されていない展覧会も多いですよね。これも時代の流れだよなあと思うし、それで良いと思うけど、「自撮り」に関しては禁止しても良いのではないでしょうか。自撮りは自分と背景との距離感がつかみにくいものですから、今回のような事故が起こりやすい危険な行為だと思います。

そんなわけで、この美術館のこの展示室では作品が破損するような事故が非常に起こりやすい状況だったと言えるのではないかと思います。(まともな美術館だったらもうちょい気を使えなかったもんかな?と疑問に思います。)

作品がはみ出てはダメ

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説明しやすいように、以前作った展示台に今の作りかけの作品を置いてみました。(抵抗をハンダ付けして作っている途中の脳みそです。)

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基本的には、展示されている作品のボリュームに対して会場が広いほうが、接触による事故は起こりにくいです。

しかし、それでも展示方法によっては事故が起こる時は起こります。

まず気をつけたい基本として、作品が展示台からはみ出ないようにするということです。

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↑例えば、この脳みそだったら展示台の大きさに対して少し小さめで、真横から見たときに展示台からはみ出ていません。

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↑しかし、仮に上の図のような横に広い作品だったとしたら展示台からはみ出てしまいますよね。この状況は非常に危険です。ちょっと服の端っことか手とか肩とかが引っかかっただけで、作品や展示台が簡単に倒れてしまいます。

実は、これができてない場合が非常に多いです。多めの人数でグループ展をしたり、それを観たりすると、台からはみ出ている作品をよく見かけます。

展示台からはみ出るようなサイズ感って、ダイナミックな雰囲気がして良さげに思ってしまう作家も多いんですよね。(危険を承知かどうかわからないけど)、だからあえて展示台からはみ出るような展示方法をしてしまう場合もあります。

だけど、これは本当に危険だから止めた方が良いでしょう。

細長い展示台を倒れないように接着する

作品がちゃんと展示台の枠に収まっていて、広めの会場だったとしても、観客が展示台に接触する事故は起こる時は起こります。

なので、多少の衝撃に耐えられる程度の強さが、作品の展示台には求められます。

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この展示台は高さが90cm、縦横が40cmのサイズです。

乗せる作品や、展示場所の環境にもよりますが、このくらいの展示台のサイズの比率であれば普通に置くだけでまあ大丈夫でしょう。(乗せる作品が重たかったり、展示場所が狭い場所だったり、水平ではない場合は対策が必要。)

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しかし問題なのは、脳みそを乗せている板くらいの上面(30cm×30cm)で高さ90cmくらいか、それ以上に細長い展示台です。おそらく件のロサンゼルスの展覧会の展示台も動画を観た感じだと、そのくらいのサイズだったのではないかと思われます。

このくらいになると、かなり細長く。ちょっと触れただけでも簡単に倒れてしまうかもしれません。特に、狭い展示会場であるならばなおさらです。

その場合には、展示台の底面を何かで接着する等の対策をする必要があるでしょう。

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そんな時、僕がよく使うのはコクヨの「ひっつき虫」という製品です。

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粘着力の強い練りゴムみたいな感じのものです。これ、画鋲を刺せない壁にポスターを貼ったり、小物の固定などに使うことができる便利アイテムなんですよね。何かと使えます。

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↑これを、展示台の底面に貼り付けて、元に戻し、上から体重をかけてグイ〜っと押さえつけます。

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これでちょっとやそっとじゃ展示台が倒れないようになります。

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↑強度的にはそこそこの力でバシバシ叩いても全く動かないレベル。これならば、お客さんがうっかり足が引っかかって蹴ってしまったくらいなら事故にはならないでしょう。

まあ、ひっつき虫を使ってあっても、実際にやってみたんだけど、尻で強めにヒップアタックしたら倒れますけどね。しかし、そこまで強い力でヒップアタックされることは殆ど無いし、少なくともドミノ倒しになるという最悪の事態は防ぐことができるかと思います。

コクヨ 粘着剤 ひっつき虫 タ-380N

コクヨ 粘着剤 ひっつき虫 タ-380N

他にも、展示台の下部に重りを入れることで、展示台の転倒を防ぐという方法もあります。これは、作品の重量が非常に重たい場合などは有効な対策方法です。

しかし、ひっつき虫を使う方法の方がお手軽なので、基本的にはおすすめです。

触れないように展示する

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↑上の写真は僕が大学院卒業の直後くらいに、池袋の地下通路のショーウインドウに展示したときの様子です。これ、僕が作品展示したの中で、最も細長い展示台を使用した展示なんですよね。

これ、すぐに倒れそうな危険な展示方法に見えるかもしれませんが、実はそれほど危険ではありません。

まず、展示台と作品はひっつき虫を使って目立たないように固定してありますので、滅多なことじゃ倒れません。

そして何よりも、ショーウインドウの中なので絶対に誰も触ることがありません。やはり、展示中の事故は不注意による人為的なものが主ですから、それがないのでかなり安全であると言えます。

まあ、地震だけは怖かったですが・・・震度3とか4くらいの地震だったら全然大丈夫ですが、震度5以上の地震がきたらやばかったと思います。でも、そこまでいくとどんな展示でもやばいので、諦めるしかないですね。

少しでも触れられたりしたら、作品が破損してしまうような繊細な作品の場合。例えばガラスケースに入れておくとか、作品を観に来てくれる人が絶対に触れないようにしておくというのも対策の1つってわけです。

その他の方法

その他にも不慮の事故によって展示台が倒れないようにするための工夫は幾つか思いつきます。

美術館とかでよくあるけど、床に「ここから先は進入禁止!」というラインテープを貼っておくのも方法の1つです。ただ、見た目的にテープが気になって、展示会場の景観を損ねるので個人的には好きではありません。

他には、大きめのカバンなどの手荷物を持っている人には、展示を見始める前に積極的に話しかけて展示会場側で預かってあげるとかですね。展示に来てくれるお客さんを見てると、カバンはけっこう引っかかりそうになる場合も多いですので。

いろいろと工夫してもどうやっても危険な展示である場合には、監視員を常に配置して危険そうな場合は声をかけて注意してもらうしかないですね。

非常に難しい場合もありますが、展示台で展示する際には、絶対に事故が起こらないように出来るだけの配慮をすることが必要不可欠であるというわけです。

まとめ

展覧会に出品して展示をするときにいつも悩むのが、「展示の見栄え」と「安全面」をどうやって折り合いをつけるか?ということです。

安全面を考慮しすぎると、バランス的に倒れそうな危険のある作品には全部支えを入れたりとか、進入禁止のラインテープベタベタだったりとか、「お手を触れないでください」という注意書きを全部の展示台に入れなくちゃならなかったりとか、作品以外のものが気になりすぎる展示になってしまいがちです。

ところが、見栄えだけを重視しすぎると、すぐに倒れたり接触したりしそうな危うい展示になってしまうことがあります。

これ、基本的に作家側は展示を雰囲気よく見せることを重要視するんだけど、展示会場側の人間は安全面重視だったりするわけで、それで作家とギャラリー側で意見が食い違うこともあったりします。ロサンゼルスの美術館の事故も、ひょっとしていろいろとあったのかな?・・・なんてことを思ってしまいました。

美術作品の展示において、安全性と見栄えのバランスは永遠のテーマだったりします。

で、そこのところを上手に折り合いをつけたり、ひっつき虫とか使ったりうまいこと工夫したりするのも作品制作の一部というわけです。

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