去年の末から、ずっと作っていた作品が完成したので、ちゃんとした感じで写真を撮ってみました。
電子パーツを5千数百個くらいハンダ付けして制作しました。思った以上に時間がかかってしまって、作るの大変でした。
タイトルは『電脳マラリア蚊』としました。「蚊」と「脳みそ」がモチーフとなっている作品です。
このタイトルにした理由は、この作品のコンセプトが「インターネット上の情報を媒介する存在」を表現することだったからです。
そのようなテーマを選んだきっかけは、個人的にも世間的にも、ネット上のコンテンツに関わる機会が、年を重ねるごとに次第に多くなっていることを感じたからです。ほんの10年程前からは考えられない程の急速な変化です。
それらの情報を作り出し、そして拡散していくことで世間に与える影響も、ものすごく興味深いです。
特に最近はブログをやっていますから、デジタルな世界での出来事が自分の中で大きなウェイトを占めるようになったということも感じます。インターネットでの活動が、そのまま自分のリアルの日常に直結している、という印象です。
この記事では、この作品『電脳マラリア蚊』の、いろんな角度から撮った写真(多めです)と、コンセプトと制作の動機などを紹介していきたいと思います。
電子パーツをハンダ付けして作った作品の写真とコンセプトと制作の動機
制作工程
『電脳マラリア蚊』は、抵抗やコンデンサなどの電子パーツを、一つ一つ地道にハンダ付けして組み立てた、立体作品です。
サイズ的には、横幅230mm×奥行き330mm×高さ200mmくらいです。僕の、電子パーツを素材とする作品シリーズとしては、大きめの作品です。
詳しい制作の工程については、以下の記事を読んでください。
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完成。
外観
↑後ろ側から見たらこんな感じ。
針も、電子パーツ(スイッチングダイオード)をハンダ付けして表現しています。
脳みその部分。近くで見ると、びっしりと敷き詰めるくらいにくっつけた抵抗部品です。
ちょっと気持ち悪いかも。
目は、コンデンサと発光ダイオードを組み合わせて、それっぽくしました。(光りません。)
羽。
薄く、そして軽やかな印象を表現したかったので、構造や作り方を工夫しています。
尻尾の先端部分はふたまたにわかれています。大きめのセラミックコンデンサなどを使って表現しました。
足は、蚊の繊細な足のイメージを出しつつも、作品そのものの重さに耐えることができるようにするのが、意外と大変でした。そのために、少し見ただけではわからないところを、こっそりと補強したりとか、いろいろ工夫してます。
五千数百個もパーツ使っちゃうと、手で持った時、ずっしりした重さを感じるくらいの重量になってしまうのですよねぇ。
裏側から見たところ。
お腹の部分。
あまり見えない部分だけど、かなりキモい感じでいい感じなので、気に入っています。
コンセプトと制作の動機
この作品『電脳マラリア蚊』は、「蚊」と「脳みそ」を融合させたようなビジュアルの立体作品です。
作品の素材として、「電子パーツ」を使用していることで、生き物的な見た目の造形でありながらも、デジタル的な存在であるということを表しています。ネット上をゆらゆらと飛び回る蚊のようなイメージです。
現代人はスマホやPCをいじりながら、無意識的にインターネットに溢れているコンテンツを吸収して、なおかつ共有しています。その結果、場合によっては、伝染病が流行してしまうのと同じように、良くも悪くも情報が拡散されていくというわけです。
そういった、情報社会ならではの現象を表現したのが、『電脳マラリア蚊』という作品なのです。
ブログとソーシャルメディア
僕にとって、ブログの存在は非常に大きいです。ブログは表現活動の一種です。ゆえに、アートの一種だと思っております。
この作品『電脳マラリア蚊』を始めとする、電子パーツを素材として使用した作品群を作っていくこととなった大きなきっかけの一つは、「ブログを始めたこと」です。
と言うのも、特にこのブログを始めてからは、いろんな人に読んでもらえる機会も増えて、ネット上で情報発信することの影響力の大きさも感じ取ることができるからです。
特に、バズったりすると、たったひとつのブログ記事だったとしても、怖いくらいの勢いで拡散していきますよね。これは、一昔前であれば想像も出来なかったことです。ソーシャルメディアを通して、一個人が爆発的な影響力を持たせることができる。それは、とてつもなく画期的なことです。
この作品のコンセプトを思いついたきっかけは、今の時代ならでは電脳空間の広がり方が、非常に興味深いと感じたからというわけですね。
情報と蚊と人間の脳
現代人は、そのほとんどが、インターネットに接続することができる情報端末を所有しています。スマホやパソコンなどがそれにあたります。特に、スマホに関しては、人によっては一日中持ち歩いて、小さな画面とずーっとにらめっこするほどに、依存性の高い機器であると感じることが多いです。
そんな我々が、どうしてそれらの情報端末を所持して利用しているのか?その答えは、おおまかに言ってしまえば、「情報」を吸収したいからでしょう。ネットニュースを見たり、Twitterをチェックしたり、ブログを読んだりするのが、最近は当たり前のように毎日の習慣として行われていることです。
ですが、その姿は客観的に見ると、まるで血を吸う蚊のようにも見えてきます。美味しそうな情報があれば、すかさず吸収して、自分の脳みそに格納する我々人間は、「明かりに群がる虫のような存在」であると比喩しても何ら違和感はありません。
さらに例えて言うならば、現在のインターネットの世界は、人間の意識だけがふらふら〜っと飛び回って、情報をつまみ食いしているような感じなのだと思います。しかも、それは知らず知らずのうちに、無意識的に行われているような印象すらも受けます。
それらの行為が、自然に行われるようになったという事実は、われわれ人間の内部の見えない部分が変化してきている証拠なのかもしれません。
それは悪いことであると、非難しているわけではなくて、個人的にはむしろ肯定的に捉えています。離れた場所にいる人間同士でも、多くの情報の共有が容易にできるようになったというのは画期的なことだからです。
それが、人間の進化の形ということなのでしょう。
すごくおもしろい時代になったと思います。
媒介して拡散する存在
しかしながら、この変化のスピードは異常です。ほんの10年前とは比べ物にならないほどに電脳世界の大きさも広大になっています。この、驚異的な速度でのインターネットの発達と動向は、「生きている」かのような錯覚を感じるほどです。
その、信じられない程の成長は、デジタルな世界に潜み、情報を介在する何者かの存在が影響しているのかもしれませんよ。生き物のように流動的にうごめいて、成長を続けているわけですからね。
ネット上のコンテンツの拡散のおもしろいところは、1人の人間がSNSなどを利用して共有し、それがいつの間にか広まっているという点です。
まるで、人間が情報を、感染力の強い病原菌の如く媒介しているかのようなイメージです。下手をすると日本を飛び越えて世界中に拡散してしまうのが、すごくもあり、怖いところでもあります。
また、僕が作品テーマとして「蚊」を連想した理由は、情報(血)を吸うだけではなくて「痒み」を残して飛び去っていく時もあるということからです。
と言うのも、万が一ブログなどが炎上をしてしまった時などは、辛辣なコメントを残していく人がいますよね。情報だけ吸収して、そのままどこかに行けばいいのに、むず痒い置き土産をプレゼントしつつ、どこかに去っていくのです。
もうね、蚊と同じなのですよね。それって。
つまりこの作品『電脳マラリア蚊』は、「デジタル」と「人間」の関わりを、「蚊」と「脳」と「電子部品」で表現した作品というわけです。
僕は、まるで生き物のような情報を、毎日のように吸収しながら、「インターネット上の情報を媒介する存在」というものを感じることがあるのです。言ってしまえば、電脳空間に存在し、暗躍している幽霊のような存在ですね。
それを、立体作品という、形あるものとして具現化することで確かめようと思い、この作品を作りました。
インターネット上のコンテンツと人間との関わりについて、人はどう思っているのか?
今一度、その事について考える必要があるのではないのか?
そうやって問題提起をすることがこの作品の目的であり、その必要性を感じたことが制作の動機です。
まとめ
以上が、作品『電脳マラリア蚊』の紹介でした。
いろいろとコンセプトや動機について書きましたが、結局、アート作品というものは、鑑賞する人間の独自の解釈があって良いものだとも思います。なので、この作品を見て、何かを感じたり、自由に思ったりして頂ければ幸いです。
2月11日から展示やります。
この作品を含む、立体作品4点を出品予定です。
麻布十番の駅から徒歩5分のところにあるギャラリーでの展覧会なので、お近くに来た際には、立ち寄って頂ければ嬉しいです。