MIKINOTE

作品制作とその他思った事を書くブログ

10ヶ月かけて完成した15000個の電子パーツで作った脳

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去年の末から作り始めた電子パーツの脳がやっとのことで完成しました。

タイトルは「接続する脳」としました。

実は先月の中旬くらいには完成していたんだけど、作品の写真撮影やら作品タイトルなら何やらを悩んでいたらあっという間に2〜3週間くらい経っていました。

最終的には制作期間は約10ヶ月、パーツの入っていた空き箱の数を数えてみたら使用したパーツ数はちょうど15000個ほど使ったということがわかりました。

いや〜長かった!!ここまで長い期間、1つの作品を作り続けたのは人生で初めてだったんじゃないかな。使用したパーツ数に関しても電子パーツハンダ付け系の作品の中では最も多い作品となりました。ちなみに1個のパーツにつき、最低でも2箇所はハンダ付けしなくちゃならないので、少なくとも30000回はハンダ付けしたということになります。

前回の作品制作記事で「あと一ヶ月くらいで完成できたらいいな」みたいなことを書いたんだけど、随分と遅くなってしまいました。最後の全体のバランス調整が予想よりも時間がかかってしまい、これでもラストスパートかけたつもりだけど予定よりも長くかかってしまいました。

何人かの方に「完成楽しみにしています!」みたいなことを言われていたのですが、完成品をお披露目するのが遅れてしまって申し訳ないです。

目次

電子パーツをハンダ付けして作った脳「接続する脳」

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この記事では、撮影した作品の写真と合わせて、作品のコンセプトや基本情報などを紹介をしていきたいと思います。

これまでの制作の流れ

これまでの制作の工程は下記の過去記事を読んでいただければわかりやすいかと思います。


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粘土模型を作成してデザインを決定する。

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粘土模型を参考にしながら電子パーツをハンダ付けして徐々に立体的な形を作っていく。

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大まかな形状が出来上がったので細部を表現していく。

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全体のバランスを考えながらさらに密度を高めていく。

完成!


基本的な作り方は、電子パーツ(抵抗)を一つずつハンダ付けをしていくという地道な作業を繰り返すだけです。

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シンプルでしょ?

基本情報

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タイトル:「接続する脳

素材・技法:電子パーツ(抵抗)、ハンダ付け

サイズ:横幅170mm×高さ130mm×奥行き210mm


使用した抵抗の数は15000個、制作期間は約10ヶ月。

サイズ的には、人間の大人の脳みそよりも一回り大きいくらいのサイズです。

作品の写真

少しでも作品の雰囲気や形状が伝わるようにと、脳の写真をいろんな角度から撮ったので載せていきます。

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斜め前から撮影1

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斜め前から撮影2

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斜め前から撮影3

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正面から撮影

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斜め後ろから撮影1

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斜め後ろから撮影2

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真後ろから撮影

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真上から撮影

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真横から撮影1

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真横から撮影2

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部分拡大1

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部分拡大2

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部分拡大3


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おまけ:ひっくり返して裏側を撮影

コンセプト

少し長くなりますが、「接続する脳」の作品コンセプトについて説明していきます。

おそらく、この脳の作品のビジュアルと電子パーツを使用して制作したということを聞くと「電脳」という言葉を思い浮かべる人も多いかと思います。「電脳」というのは、アニメ作品の攻殻機動隊で登場する「電子化された脳」のことですね。

実際の所、何人かの知り合いにこの作品を作ってる途中の写真とかを見せたのですけども、そうするとほぼ確実に「これ、電脳じゃん!」って言われたりするんですよね。

実はこれは、その通りではあります。

フィクションの世界に出てくる電脳や電脳化に近いような感じのことがリアルタイムで進行しているよね・・・ということをここ最近は特に肌感覚で感じることがありまして、それを立体造形作品として表現したのがこの「接続する脳」という作品だからです。

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例えば、今の時代は大抵の人はスマホを持ち歩いていて、それを使って情報を調べたり写真を撮って保存したり、SNSを使ってコミュニケーションをとったり、何かわからないことがあれば、すぐにポケットの中のスマホを取り出して検索します。これって、ブラウザのアドオンみたいに脳の機能を拡張するような行動なんじゃないかなって思うんですよ。

ウェブサービスなんかもほんの10年前と比べると今では非常に充実しています。我が家では、iPhoneにカレンダーのアプリを入れて奥さんと予定をクラウドで共有してスケジュールを管理したりするし、僕なんかはちょっと思いついたアイデアとかはすぐにスマホを出してメモアプリでメモして、家に帰ってからそのメモが同期されているパソコンでその走り書きを編集したりとかしてます。

こういうことは多くの人が普通にやってることだと思うけれども、これだけIT技術が発達するまでは無理だったことなんですよね。想像すらしていないことだったはずです。

で、何が言いたいのかというと、スマホやパソコンやタブレット等の端末を介してネットワークに接続することで、人間の脳はすでに(間接的ではあるけど)電脳化に近いような状態になっているのではないか?ということを考えたというわけなんですよね。

人間の脳はコンピューターに例えられることがあります。現在では、ネットやそれに接続するためのIT端末の性能などは以前とは比べ物にならないくらい複雑化&大容量化していて、人間の脳で言うとニューロンだとかシナプスだとかがつながり合うように複雑に絡み合って存在しているだろうなあということを想像したりします。

電子パーツで脳を作ろうと思った動機は、素材としてIT端末の部品である電子パーツを用いることで、脳と電気的な世界の関係性を表現することができるのではないか?という思いつきから生まれたものです。

現代人がIT端末を用いる行為は脳の機能の拡張と同じ意味であるのは間違いないことだと思います。

実際のところ、画像や文章などの情報を保存したり、他人とコミュニケーションをとったりなど、IT端末を通してできることは本質的な意味では脳が司令を出して自分自身の肉体だけでやっていたことばかりです。文明が発達する以前はデータの保存は頭の中に言葉や風景を記憶することで、他者とのコミュニケーションは直接他人と会話したりするだけの選択肢しかなかったわけですから・・・それが、今ではほんのちょっとスマホなどをいじるだけで、生身の脳と体だけでできることよりも遥かに高度なことができるようになっているのです。

つまり、スマホやPC等の端末や、それを使ってウェブサービスやネットワークに接続する行為は、生身の脳みそだけで補えないより高度な機能を行えるように補助するような役割を担っているというわけです。接続するための端末も体の一部だと仮定して考えればこれは進化に近い意味合いを持つのかもしれません。

言ってしまえば、スマホやパソコンなどの端末を使用したり、それを介してネットワークに接続するという行為は擬似的な電脳化みたいなものなのではないでしょうか。

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こういう話って賛否両論あると思います。自然本来の姿から離れていくと危機感を覚える人が増えちゃうってやつですね。健康食品の宣伝文句で「自然由来の成分配合だから安心安全!」みたいなのが多いのは、自然=良い、人工=悪いという二元論が一般に受け入れられやすいからなのでしょう。

だけれども、個人的にはそんなに悪いことじゃないと思うんですよね。むしろ早く電脳化したいですもん。

手のひらに収まるような板っ切れだけで、昔は不可能だったスマートかつスピーディーなコミュニケーションや、膨大なデータを管理&格納したりできるわけですからね。人類はマジで進化しているんだなあと感じます。むしろ、これに慣れてしまうとスマホとかがなかった時代はどうやって仕事してたんだろうか?なんてことを昭和生まれの僕ですら考えちゃうレベルですよね。

離れた人との連絡手段も手紙や電話しかなかった時代と比べると、今ではメッセンジャー系のアプリでリアルタイムでチャットみたいなことが簡単にできちゃうのはホント便利!固定電話しかなかったときと比べるとデートの待ち合わせに遅れる連絡も圧倒的に簡単になりました。SkypeやLINEにはテレビ電話みたいな機能もありますから遠距離恋愛も恋人との距離を感じにくくなったのも良いことですよね。

ちょっと前までは、天気を調べたりするだけでもテレビやラジオのニュースを視聴しなくちゃならなかったわけだけど、今ではスマホのアプリを開けばいつでも情報を知ることが出来ますし、料理のレシピなんかもちょっとググればいろんな人のいろんなレシピを知ることが出来ます。旅行に行った先でも、その場で観光情報を調べたりできるなんて以前は考えもしないことでした。

そうやって今と昔でできなかったこととできるようになったことを一つ一つあげていくとめちゃくちゃすごいことだって実感できますよね。

逆に考えると、これらの便利さが何らかの理由で急に使えなくなったときに途方に暮れてしまうことになるわけです。人間って一度贅沢を覚えてしまうと生活水準を落とすことってなかなか難しいんですよね。これは脳をIT端末とインターネットによって補完している僕達にとって恐ろしいことです。それは人間が現代の便利すぎる技術に頼り過ぎた弊害ということが言えるでしょう。

と、そんな感じのイメージだとか表現しようとしたのが、今回作った「接続する脳」というわけです。

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そもそも、インターネットそのものも膨大な情報の集合体で、イメージ的には非常に巨大な脳みそのようなものだと思います。

現在ではインターネットの世界は複雑に様々な情報がお互いに絡み合って構成されています。僕達が何か調べ物をしようとしてアクセスするウェブサイトも相互、または一方的にリンクが貼られていて、広大かつ複雑なネットワークを構築されているということが想像できます。そして、それは年々増加して、宇宙のように膨張し続けています。

我々人間の脳もそれと似たようなものです。生物としての機能や本能はもちろんのこと、様々な記憶や体験が脳内で絡み合ってその人の人格が形成されているわけです。

「接続する脳」に使用した電子パーツの1つ1つは神経細胞のイメージです。その電子パーツを電子機器の基盤に取り付けるのと同じく、一つずつハンダ付けして制作しました。それによって、数え切れないほどの細胞がつながり合って膨大なデータを格納しているような状態を表現してみました。

まとめると、脳という人間の有機的な臓器を電子パーツを使用して作成することで、現代のテクノロジーによって補完されている現代人の脳の姿のイメージを表現しようとしたというのがこの作品のコンセプトです。

また「接続する脳」に触れることで、ITに依存している現代人のあり方について問題を感じたり考えたりするきっかけを与えることがこの作品の目的というわけです。

まとめ

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以上が電子パーツをハンダ付けして制作した「接続する脳」の概要でした。

余談ですが、これは作品が完成するたびに毎回のことなのですけど写真撮影は非常に難しかったです。光やカメラの設定で作品の雰囲気がまるっきり変わってしまうんですよね。最初グレーのグラデーションの背景紙で撮っていたのですが、あまりイメージ通りに写真が撮れませんでした。そこで、黒い背景紙に切り替えて撮影をやり直すことにしまして、そしたらなんとなくそれっぽい写真が撮れた気がします。

それと、下手したら制作期間が丸1年くらいかかりそうだったのは自分でもびっくりなのですが、作り始めた当初はこんなにかかるとは予想していませんでした。制作期間が長くなった理由としては、今年から生活環境の大きな変化があって私生活が忙しくなっちゃったせいもあるんですけど、脳ってのは単純に作業量が必要なタイプのモチーフだったということが大きいですね。パーツの数も抵抗を10000個くらい用意していけば大丈夫しょ!なんて余裕ぶっこいてたら、途中で全然足りなくなりまして5000個ほど追加したりしました。

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実際に作業を進めてみると、やはり脳のシワなどの表現が難しくて、イメージ通りに表現するためにはある程度の密度感も必要でした。そして密度感を感じさせるためにはそれだけの作業量も必要という・・・

そんなわけで、今まで作った作品の中で最長の制作期間と、電子パーツハンダ付けシリーズの中では最大の使用パーツ数の作品となってしまいました。

何かと苦労することが多い作品だったなあというのが、完成後の正直な感想ですね。

そのうちに展覧会などをしようと思っているので、その際には実物を見てもらえると嬉しいです。


↓過去の作品など

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