今年の4月から作り始めていた作品がやっとのことで完成しまして、写真なども撮影したので紹介します。
いや〜長かった!忙しくなっちゃって制作できなかった期間もあったんだけど、それにしたってトータルで半年間という制作期間は長すぎました。
それもそのはずで、終わってみれば使用した電子パーツの数は約10000個でした。一つずつハンダ付けして地道に作るしかない作り方をする作品なので、どうしても時間がかかってしまいます。そして、この10000という部品数は今までで最大です。そりゃあ時間かかっちゃうよね。
タイトルは『電子世界の支配者』としました。
「猫って特にネットとかでは色んな意味で人間を支配してるよね。」みたいな感じです。
この記事では、このタイトルにした理由や、制作の動機、制作コンセプトなどを、撮影した作品写真などと合わせて説明していきたいと思います。
<目次>
電子パーツ猫作品『電子的世界の支配者』
制作工程について
これまでの制作工程の記録は、下記の過去記事を見ていただければと思います。
↑模型制作①
↑模型制作②
↑制作途中①
↑制作途中②
↑制作途中③
↑制作途中④
↑おまけ:試しに電気抵抗を計ってみた話
過去記事を読んでいただければわかると思うんだけど、作業内容は非常に単純です。電子パーツ(主に「抵抗」)を一つずつピンセットで摘んで、ハンダごてを使ってハンダ付けしていく作業の繰り返しです。自分言うのもなんだけど、ものすごく地道に頑張って作りました。
今回は、完成する頃には、猫作品のほぼ全体を構成している「抵抗」と呼ばれる部品を約10000個も使っていました。今までも電子パーツを使った作品はいくつも作ってきたんだけど、この数は過去最高ですね。手間という意味では過去最大です。
実は、作り始めた当初は「7000個くらいで完成するかな?」と思っていたのですが、予想以上に全然パーツの数が足りなくて、途中でパーツを買い足しました。
制作期間は約半年です。半年間、時間のある時は少しずつでも作業机に座って、制作をしていました。
電子パーツをハンダ付けして猫の立体作品を作るよ!その2 - YouTube
↑一応、ちょっとだけ作業風景を収めた動画も撮ってあります。これを見ていただければ、どんな感じで作っているのか大体のイメージはできるかと思います。
外観
まずは、出来上がった猫の立体アート作品『電子的世界の支配者』の外観をいろんな角度から。
↑正面
↑斜め①
↑斜め②
ポーズは猫をイメージしやすいように、スタンダードに猫っぽい座り方に設定しました。
角度や光の当て方で作品の見た目の印象がものすごく変化してしまうので、撮影がものすごく難しかったですね。
↑側面
抵抗は毛の流れを意識しながら、足の長さや方向を工夫してハンダ付けしています。場所によってパーツの密度の差が大きいので、実物を見ると透けているように内部のパーツがチラチラと見える部分が多数あります。
↑真後ろ
↑後ろ斜め①
↑後ろ斜め②
完成してみると、正面から見たときよりも情報量が少ないはずなのに、意外と後ろ姿も可愛い感じに仕上がった気がします。自分的には、ちょっとお気に入り。お尻とか。
近寄って拡大すると、部品が1つずつびっしりとハンダ付けされているのがわかるかと思います。
↑足も一応、指っぽい感じをなんとなく表現してあります。猫の足の可愛い感じを表現するのがすごく難しかったですね。
↑尻尾は付け根から右後ろ足を回り込むかたちになっています。尻尾の先端は生命感を表現したくて、ニュイっと上に浮かせてみました。
↑後頭部〜背中
↑耳はこんな感じ。猫の耳の穴って触れちゃいけないような場所だと思っていて、なかなか表現が難しかったです。それっぽい雰囲気を出すために何回かやり直しました。
↑目だけは抵抗ではなくて、「CDSセル」という光センサーのパーツを使っています。と言っても、特に電子回路的な仕掛けがあるわけではなくて、見た目的にデジタル感のある猫にしたかったので、この部品を採用しました。
↑見上げで
↑ちょっと見上げる角度で。見る角度で、けっこう顔の雰囲気変わりますね。
↑ひっくり返して裏側。
接地面のところは、作り始めた一番最初にくっつけたパーツがそのまま残っていて、裏側から見ることができます。
僕の電子パーツ作品シリーズは、全部内側から作っていきます。だから、作品の外側にいくにしたがって、部品の密度が高くなっていく感じです。
最終的には、部品数もガッツリと使っているおかげで猫っぽい毛並みだとか質感表現がそこそこできたんじゃないかなと思います。
ちなみに、この猫作品のモデルは特にいません。Googleの画像検索で出てきた24枚くらいの猫画像をプリントアウトして、それを参考に見ながら作りました。いろんな猫の部分を寄せ集めたらこんな感じになっちゃったってかんじ。
コンセプトと制作の動機
この猫作品のタイトルは『電子的世界の支配者』としました。
何でこんなタイトルにしたのか?と言うと、「人間って実は猫に支配されてるんじゃね?」と思うことがめちゃくちゃ多いからです。
僕は、インターネットでいろいろと話題になるニュースや、おもしろそうな記事なんか見つけては楽しく読んだりすることが多いのですが、その中には一定の確率で「猫」に関する記事があるんですよ。猫が変な動きをしてる動画とか、猫が人間に媚びてる画像とか、毎日見かけるそういうかわいい猫様コンテンツを見ると、それだけで心がほっこりするんです。
もうね、完璧なんですよ。猫は全部可愛いです。猫の可愛さは卑怯です。ブログのアイキャッチ画像とか、とりあえず猫にしとけばその記事はある程度多くの人に読まれます。(たぶんね)
それくらいすごい存在なのです。猫。
猫様に関する情報は、見かけたら必ずチェックします。おそらくそれは僕だけじゃなくて、世の中の多くの人がそうなんじゃないでしょうか?ネット上で、それだけの巨大な支配力がある存在。それが猫です。
と、そんなことを、前々から常々思っていまして、「じゃあ電子世界を支配している存在がいるとしたら、こんな感じなんじゃね?ていうかそれって猫でしょ!?」と思って、制作したのが今回の作品『電子的世界の支配者』というわけです。
電子パーツと言うのは、基本的にはパソコンだとか、その他の家電製品など、あらゆる電子機器に使用されている部品です。今回10000個も使ってしまった「抵抗」という部品は、それ自体はアナログな性質を持っているものです。しかし、それを大量に組み合わせて形作る事によって、デジタルで、サイバーで、無機的で、それ自体が蓄積された情報の塊みたいな、そんな感じの世界観を表現することができるんじゃないかなと考えました。
ほら、なんとなく電気信号の網みたいに見えない?そういうイメージを表現したくて、そのためには電子パーツという素材は合っているんじゃないかなと思います。
電子パーツを大量にハンダ付けしてくっつけて猫の立体作品を造形する。この工程によって、ネット上での支配者の存在を具現化する。それがこの作品の制作コンセプトです。
電子的世界
また、「電子世界」ではなくて「電子的世界」という言葉を使ったのは、デジタルな世界とアナログな世界との境界が曖昧な感じになっているような気がしたからです。デジタルの世界に限定した話にしたくなかったから、「電子的世界」という言葉を考えて出して、使ってみました。
インターネット上での猫の支配力ってのは、僕達の生身の脳みそにも多大な影響を及ぼしています。ちょいと、個人的な話をするとインターネットでの情報を積極的に取り入れるようになってから猫のことがますます好きになった気がしています。
僕自身は、子どもの頃、高校卒業までの実家に住んでいた時は、ずっと猫を1匹〜5匹くらい飼っていました。その影響もあって完全に猫派なのですが、実家を離れてからは猫は身近にいる生活からは離れることになってしまいました。
だけど、猫のことが「マジかわいい!」「もふもふしたい!!」と本気で思うようになったのは、むしろ身近に猫がいない最近のような気がします。もうね、完全にインターネットでの猫画像とか猫動画のせいですよ。間違いない。
そんな感じで、「猫の可愛さによる支配力」と言うのは、電子世界の外側にも多大な影響を与えています。つまり、現実での我々人類の大半の精神をガッチリと捉えて操作しているのは実は猫なんじゃないかな?と感じるんです。
それと、人間の脳みそは、微弱な電気信号によって動いてるという話を聞いたことがあるんだけど、そういう意味でもデジタルな世界とアナログな世界は実は近いものなんじゃないかな?と言うのも最近思うことです。脳みそは有機的なコンピューターみたいなもんだしね。
それ故に、デジタル世界と、その境界が薄くなりつつあるアナログの世界も全部をひっくるめての支配者」ということで、『電子世界の支配者』というタイトルを考えました。
観て、感じてくれればよい
と、ここまでのところで、コンセプトだとか制作の動機について長々と書いてきたんだけど、実はアート作品を見るときにはそんなにそういう小難しいことを考えなくても良いです。少なくとも最初は深く考えることは必要ありません。
まずは、観て、感じてくれればそれで良いのです。
というよりも、アート作品を観たときに、作品とタイトルをパッと観ただけで制作意図などを完璧に理解できる人なんてぶっちゃけいません。そういうのは、その作品が「なんかおもしろい!」となって作品と作った作家に興味を持ってから、この記事に書いたような説明文を読んだり、アーティストに直接話を聞けば良いのです。
じゃあ、どうしていろいろとコンセプトを練ってから作品を作るのか?という話になってきちゃうのですが、それは、それがないとそれはそれで「作る意味」みたいなものが見いだせないからです。
やっぱり裏側では、どうして作るのか?とか、作る意味は?とか、何を伝えたいのか?とか、そういうこともある程度きっちりと考えておかないと作品の深みみたいなものが表現できないんですよ。少なくとも僕はそう信じています。
それに、そういうのがないと、展示を観に来てくれたお客さんに質問されても作品について説明できないしね。
でも、本質的には、観て、何かを感じてもらって、作品を観た人がそれぞれで自分の勝手な解釈をして楽しんでくれれば、それで良いのです。観た人によって、感想が異なると言うのもアートの魅力の1つですからね。
おそらく、この作品紹介記事を読む人の多くは作品を作る人ではないと思います。元々はそういう分野に全く興味がなかった人も多いはずです。
僕がこうして情報発信している目的の1つはまさにこれで、より多くの人に自分の世界を観てもらって、芸術とか、アートとか、美術とか、そう呼ばれているものに興味を持つ人が増えたらいいなと思うからです。
今回の猫作品を観たことで、何かを感じてくれる人がいたら嬉しいです。(できれば写真だけじゃなくて、実物を観てもらいたいです。展示が決まったらまたお知らせします。)
まとめ
ここ最近は、このブログとか、その他のネットニュースを見たりとか積極的にいろいろとやるようにしてるんだけど、その中でインターネットと現実の境界ってすごく薄くなってきてるよね、と感じることが多いです。
そもそも近年のデジタル技術の発達はすごすぎるんですよね。僕は小学生の頃はファミコンとかの時代ですから、それと比べたらとんでもない進歩です。リアルタイムで進行するイベントみたいに、ネット上でいろいろと発言したり記事を書いたり見たりしても、それがものすごくリアリティーあるんですよ。
そういう部分って、現代人全体がなんとなく感じている部分だと思います。僕もパソコンの前に座って、いろいろと作業している時間がすごく多いし、そういう感覚をひしひしと感じながら生活しています。だから、日常で感じるそういうネット世界の独特の感覚みたいなものを、作品として表現できたらいいなと思って、今みたいな感じにシリーズをずっと作っているというわけです。
今後も、電子パーツハンダ付けシリーズは制作を続けていこうと考えています。
次にどんなもの作るのかはまだ決めてないですけどね。決まったらまた記事を書きます。
↓過去に作った作品たちです。